良い音にするドラムのチューニングのポイント|表と裏の音程差

B!

ドラムのチューニングが上手くいかないんじゃあああ!

と、困っている人は多いのではないでしょうか。

ドラムのチューニングって感覚的な話が多くて、何が正解か分かりにくいですよね。

よく言われるのが、
「テンションボルトが回らなくなるくらいまで締める」
「チューニングキーを〇〇回転させたくらいが丁度良い」
「指でヘッドを押して凹むか凹まないかくらい」など。

ですが、これらはドラムのパーツやヘッドの状態や、個々人の力加減によっても変わるので、基準が曖昧です。

楽器の状態や力加減で変化しない基準となると、やはり音程です。

というのが今回のテーマですが、「その音程がわからんのだよ!」という悩みの解決に挑むのも、もう1つの目的です。

音程を基準にすると、どの位の音程に合わせたら太い音・歯切れのいい音になるか明確になり、音作りがやりやすくなります。

音程でチューニングする簡単な方法、ドラムごとの適切なピッチ(音域)、表と裏の音程差によるサウンドの違いをメインにお送りします。

なるべく簡単にお願いします!

…頑張ります!
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ドラムのチューニングの基本手順

初めてドラムのチューニングを行うという人の為に、基本的な手順について解説しておきます。
(やり方はもう知っているという人は読み飛ばしてしまって構いません。)

ドラムのチューニングは、テンションボルトをチューニングキーで回して行います。

チューニングキーが必須ですが、基本的にどのメーカーでも共通サイズ。1つあればOKです。

テンションボルトは、締めていくとドラムの音程が高くなり、緩めれば低くなります。

簡単に手順をまとめると、次の様な流れになります。

チューニングの手順

①テンションボルトを一旦全て緩める

②テンションボルトを手で締められるところまで締める

③チューニングキーでテンションボルトを均等に締めていく

①テンションボルトを一旦全て緩める

改めてチューニングをしていく場合は、1度テンションボルトを全て緩めてから締めていくと良いです。

ゼロから始めた方が、各ボルトにどの位テンションが掛かっているか分かりやすくなるからです。

下の画像の様に、フープからテンションボルトの頭が離れる程度に緩めます。

緩める際は、1か所だけを一気に緩めるとパーツに負荷が掛かるので、各ボルトを均等に緩めていきます。

ボルトにテンションが掛からなくなってきたら、一気に緩めても問題ありません。

②テンションボルトを手で締める

緩めたテンションボルトは、手でさっと締めていきます。
ネジ山を直接触って締めても構いませんし、ボルトの頭を持って締めても良いです。

手で締めるのが通常ですが、こういったチューニングキーがあると、緩める時も締める時も便利です。

頭のツマミを持って高速で回せるので、とても楽で爽快。
手だと痛くなったり汚れたりしますし、結構辛いです。

締めていくときは、1本ずつ締め切らない事。
ヘッドとフープに偏りが出ないように、各ボルトを均等に締めていってください。

全てのボルトが、指で押してもグラつかない位までになったらOKです。

③テンションボルトを対角線で順番に締めて、均等に張る

ここからは、チューニングキーを使って締めていきます。
基本的に、各ボルトは均等に締めていきます。

下の画像の様に、1本回したら次は対角線上のボルトへ。
その次は、直前に回した所から遠いボルトへと順に締めていきます。

この時、チューニングキーを1度に回し過ぎないのがコツです。
1本につき、多くても90度くらいの量が良いでしょう。
回す角度が大きいほど、1本当たりの誤差が大きくなり、偏った張り方になっていきます。

これを何周か繰り返し、回すときに手応えを感じるようになったら、
テンションボルト付近の音程「ラグピッチ」を確認します。

各ボルトのフープの内側2cm辺りのヘッドを叩き、音程を聴き比べて確認します。
あまり内側だと、ラグピッチではなくドラムの中心を叩いた時の基音が鳴り、フープ際だと高い「倍音」が鳴ります。
叩く場所が安定しないと、毎回違う音程が鳴りますので注意しましょう。

音程を聴き比べ、低いところは締め、あるいは高いところは緩めて各テンションボルトの音程を揃えていきます。

簡単に言ってしまえば、ドラムのチューニングは「音程確認→チューニングキーを回す」の繰り返しです。

各ボルト付近の音程を揃え、中心部を叩いた時の音(基音)が、イメージ通りの音程や音色で鳴る状態を目指していきます。

しかし。

叩いても音程よくわからんし、そもそも音程ってどこに揃えるんじゃい!

と思った人は多いはず。

ここまでは、あくまで基本的な動作の部分。

ここからが、重要です。

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音程(ピッチ)でのチューニングを簡単にする方法

音程と聞いて、「音感ないからドラムやってるんだけど…」と思った人もいるかもしれませんが、安心してください。

音程を正確に判別できる耳は必要ありません。

堂々とチューナーやアプリを使っちゃいましょう。

私は、無料のアプリを使ってチューニングを簡単にしています。

まさかの機械頼み!

ギターやベースだってチューナー使ってるんですし、ドラムも使っていいと思うんですよね。

しかし使うアプリは、よくある楽器用のチューナーアプリではありません。

ドラムの音は複雑な倍音が多く、普通のチューナーだと反応しなかったり、思いもよらない音が表示されたりします。
かえって訳が分からなくなることも。

使うのは、音の周波数そのものを測るアプリです

ドラムのチューニングに使える無料アプリ

ドラムのチューニングの際に使う周波数測定アプリですが、「Sonic Tools SVM」というiOS向けの無料アプリを使わせてもらっています。

「Sonic Tools SVM」のアプリ説明では、楽器のチューニングに使える精度ではないとありますが、一般的なチューナーアプリよりも高精度だと感じます。
色々試しましたが、これが1番しっくりきました。

(Androidだと同種の測定アプリは、「Spectroid」「Sound Analyzer Free」などがあるようです。)

お金をかけてもいいので、ドラム専用に開発された製品を使いたい!という方は、記事最後にドラム用のチューナーや機械について書きましたので、ご参照ください。

 

色々述べてきましたが、やることは単純。

テンションボルト付近の周波数(音程)をアプリで測りながら、周波数の低いところをちょっとずつ締めていくだけ。

では、具体的にどの位の音程(周波数)にしたら良いのか。
ドラムのチューニングの基本が詰まっている、タムのチューニングを例に解説していきます。

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タムのチューニングについて

タムに限らず、ドラムはサイズごとに適した音程があります。

ドラムのサイズは打面の口径(インチ)で表しますが、基本的に口径が大きいほど低い音が得意で、小さいと高い音が得意です。

タムの音域、表裏の音程差(周波数/hz)

タムのサイズごとに適した音域と、表裏(Top/Bottom)のボルト付近のピッチの組み合わせを表にしてみました。

(表中の音域や周波数は一般的な目安であり、この数値に限る訳ではありません。また、シンプルにするため周波数の小数点以下は切り捨て・切り上げをしています。)

表の見方ですが、例えば16インチのタムの縦軸で基音の欄を見てみると、C2〜F#2(ド〜ファ#)の音域が適していることがわかります。

ドレミファソラシは、アルファベットでは CDEFGAB !

また表と裏の張り具合を変えても、同じ音程に出来ることがわかります。

例えば12インチタムで、ボルト付近のピッチを表165Hz/裏220Hz(完全4度の音程差)にした時の基音はA2/ラ。
表も裏も189Hz(表裏均等)にした時の基音も A2/ラ です。

ちなみに、完全4度は半音5つ分の音程差(例:ドとファ)、長3度は半音4つ分(例:ドとミ)、短3度は半音3つ分です。

しかし同じ音程でも、表裏の張り方によってサウンドにかなりの違いが生じます。

基音はなるべく維持しつつ、表裏の張り具合を変えて録音してみましたので、実際に聴き比べてみましょう。

どうでしょう。
①〜④へ進むにつれて表と裏の差(音程差)をなくし、⑤で表裏の張り具合はほぼ均等にしています。
⑥〜⑧は参考として表ヘッドを高くしていってみました。

表が低く裏が高いと、アタック音よりも音の太さが強調され、余韻が右下がりに減衰する印象。
表が高く裏が低いと、アタック音が目立つようになり、後から音が上がってくる感じ。
均等だとスッキリした響きになりますが、互いの差が広がる程それぞれの特徴が強くなる傾向にあります。

特に決まりはありませんが、あえて言えば均等張りだとジャズでよく聴くサウンド、表が低くて裏が高いとロック寄りだと思います。

表の方が高い組合せは出番が少ないと思うので、一覧から省いてます。

つまるところ、ドラム自体の音程(基音)は表裏の周波数の総和でほぼ決まります
そして、表(打面)を張っていくとアタック音が硬くなっていき、聴感上のピッチも高域にシフトしていきます。
裏面は叩いた後の余韻への影響が大きいですが、こちらも張れば基音は上がっていきます。

ドラムのパーツや素材、使うドラムヘッドによっても最終的なサウンドは変わってきますが、ドラムのチューニングの基本的な考え方はこんなところです。

ドラムセットでのタム間の音程差

タムが1つだけであれば、最も響くポイントでチューニングしても良いのかもしれませんが、複数のタムを使う場合は、それぞれの音域や、互いの音程差も意識しなければなりません。

一般的には、タム同士の音程は4度差か3度差でチューニングすると、音域もうまく収まり自然な音程差になります。

それぞれ録音してみましたので、早速聞いてみましょう。

今回の音源では、以下のようにチューニングしています。

【4度差】タム間の音程差が完全4度(半音5つ分)

▶︎10"タム = レ/D3(Top 240Hz/Bottom 260Hz)
▶︎12"タム = ラ/A2(Top 178Hz/Bottom 216Hz)
▶︎14"フロア = ミ/E2(Top 125Hz/Bottom 168Hz)
▶︎16"フロア = シ/B1(Top 87Hz/Bottom 132Hz)

 

【3度差】タム間の音程が3度(半音4つ分)

▶︎10"タム = ド#/C#3(Top 225Hz/Bottom 245Hz)
▶︎12"タム = ラ/A2(Top 178Hz/Bottom 216Hz)
▶︎14"フロア = ファ/F2(Top 130Hz/Bottom 192Hz)
▶︎16"フロア = ド#/C#2(Top 97Hz/Bottom 160Hz)

どちらかといえば、4度差の方が音の分離が良く、3度差の方はどっしりとした印象を受けます。

強いていえば、3度差の方がクラシックなロックに合うかとは思いますが、演奏する音楽によって選択するのがベストだと思います。

チューニングを簡単にする機械(チューナー)

ドラムのチューニング用に作られている、チューナーや機械を3種類紹介します。
いずれも定評のあるものですが、使った事はないので、概要のみ記述していきます。

①「tune-bot」

ドラムの音程を測ってチューニングするチューナー。
打楽器用に作られているだけあって、ドラムがチューニングしやすくなるような機能が搭載されています。

 

②「TAMA / テンションウォッチ」

ドラムのヘッドに乗せて、張り具合を計測する道具です。
シンプルに物理的な張力を測ることで、均等に張られているかチェックします。

 

③「EVANS / トルクキー」

設定したテンションに達すると、ハンドルが外れて教えてくれるチューニングキー。
精度の良いパーツで作られたドラムで使用すれば、ある程度均等にチューニング出来るのではないかと思います。

おわりに

ドラムのチューニングは経験値だとよく言われますが、客観的に数値化できる機材があった方が、より効率的に習得することができます。

無料アプリでもメーカー製のものでも、試したことの結果を測定していくうちに、目標とする音とそこに至るまでの変化がわかるようになってきます。

そうなってくると、どんどんチューニングが簡単に、楽しくなります。

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